お母さんの問いに首を振った。
全然、分からない。
お母さんが何をあたしに伝えようとしてくれてるのか。
「やっぱり?
お母さんも、分かんないの」
「え?何それ…」
「しょうがないでしょ?
優の話、雫にしたかったんだもん」
お母さんはそう言ってふふふ、と笑っている。
お父さん。
お母さんを、もらってくれてありがとう。
きっと、お父さん以外にお母さんをうまく扱える人はいないんだろうな。
今、そう思ったよ。
「さて、温泉でも行く?」
「え…いいよ、留守番してる」
どうせ、温泉だって人でいっぱいだろうし。
「そう?じゃあ3人で行ってくるね」
お父さんとお母さんと優は賑やかに部屋を出て行く。
やっと1人になれたあたしは畳に大の字で寝転がった。
はぁー…
やっと平穏が戻ってきた。
やっぱり静かなのが1番ね。
そう、思っていたのもつかの間。
誰かが部屋をノックする音が聞こえて。
仕方なく立ち上がり、ドアを開ける。
すると
「入れてよ、雫」
両手に冷えたお茶を持った廉が立っていた。


