それから、有名な観光地を回った。
どこもかしこも人だらけで全然楽しめなかったけど。
で、今は旅館に着いたところ。
「雫、どうする?
廉くんと同じ部屋にするかぁ?」
ニヤニヤ笑いながらお父さんがそう言って。
あたしは即答。
「絶対イヤ!
ってか冗談でもそんなこと言わないで!」
なんでイチイチお父さんはあたしを怒らせるようなこと、言うの?
意味分かんない!
それに廉と同じ部屋にしようとするところも
意味分かんないし!
これだからオジサンは困るのよ…
と心の中で呟いた……はずなのに。
「雫、秋平さんにオジサン、なんて言っちゃダメだよ」
いつの間にか隣にいた廉にそう言われて。
「……別に言ってないじゃん」
ワンテンポ遅れて言い返す。
「そうだね。
言ってない。
だけど、顔に書いてあった」
クスリと笑う廉。
恥ずかしくなって俯いた。
廉はいつだってそうだ。
あたしをからかって楽しんでる。
今だって絶対、顔に書いてあるワケないのに。
こうやってあたしの反応を見て遊んでるんだ。
サイアク。
最悪な幼なじみだよ、廉は。


