「雫ちゃんも知ってる通り、光と秋平くんは同じ職場の同僚でさ。
同期、っていうのもあって2人はすごく仲がいいワケだよ。
それに光の話じゃ、秋平くんの相談によくのってたみたいだし。
で、零ちゃんは光の教え子であって、
教育実習では光が零ちゃんの担当だったからもちろん、2人も仲が良くて。
俺の入るスキがまったく、ないんだよ。
分かるかい?雫ちゃん」
誠司さんが切なげな目であたしを見る。
「あ、はい。
分かりました。
ところで1つ…質問、してもいいですか?」
「ん?なんだい?」
さっきの誠司さんの話で1つ、気になったことがあった。
「お父さん、光さんに何を相談してたんですか?」
あたしが知らないお父さんの話。
ちょっと興味があった。
「詳しいことはよく知らないんだけどね?
どうやら、零ちゃんのことで相当悩んでたんだって。
自分は生徒と付き合ってもいいんだろうか、とか。
零が何を考えてるか分からない、とか。
あ、こんなこと雫ちゃんに教えちゃダメだったかな?」
言ったあとに気づいても遅いですよ、誠司さん。
と、いう言葉を呑み込む。
なるほど。
そういうことか。
悩む、ってことはそれだけ本気でお母さんのことがスキだった、ってことだよね?
あたしもいつか、できるかな。
本気の恋愛。


