「随分とお父さんと仲が良いんだね、雫ちゃん」
お母さんと歩いていた光さんが言った。
「仲良くなんてないですよ!
毎日ケンカばっかりで…」
あは、と笑うあたしに光さんは言う。
「それが仲いい、ってことなんだよ?」
ね?零ちゃん、と同意を求められたお母さんは頷いた。
「あ、もしかして零ちゃん、朝倉先生が雫ちゃんと仲良いからやきもち妬いてる?」
ニヤッと笑う光さん。
「な、何言ってるんですかぁ!
そんなワケないですよ!
母親として、微笑ましいかぎりです!」
お母さんがあまりにも焦るから光さんと2人して笑ってしまった。
「あ、そうだ。
雫ちゃん、1つ注意しなきゃいけないことがあるの。」
「え?なんですか?」
「あのね、あなたのお父さん。
すっごいピュアでね?
面白いくらい、傷つきやすいの。
だから冗談でも言葉に気をつけたほうがいいわよ。
じゃないと、落ち込みすぎて大変なことになるから」
最初は真面目な顔をしていた光さんは
なぜか最後にはまたニヤニヤしていて。
お父さんと光さんの間に、何かあったのだろうか。
なんて疑問が頭の中に浮かんで消えた。


