「よし行くぞ~」
とお父さんの声が聞こえて。
車が動き出す。
でもすぐに止まって。
よく見るとパーキングエリアから出るのに渋滞していた。
これじゃあ先が思いやられるなぁ…
なんて思っていると手の中の携帯が震えた。
液晶には梢の名前が表示されていて。
さすが梢。
返信が早い、そんなこと思いながらメールを開く。
『ごめん、ごめん。
冗談だからお土産、買ってきて』
可愛い絵文字付きの文章。
笑いながら謝っている梢が容易に想像できた。
『おいしい物、買ってくよ』
と送信すると携帯を閉じた。
今度は音楽プレーヤーを起動させる。
中学生になってから貯めたお金で買った物だ。
イヤフォンからは英語の歌詞が流れてくる。
中学生になってから洋楽に目覚めたんだ。
今じゃ音楽プレーヤーの洋楽が占める割合は邦楽より多い。
音楽の世界に浸っているとまた、手の中の携帯が震えた。
メールのマークが小さいディスプレイに表示されている。
今度は誰だろう。
そんなことを思いながらメールを開いた。
「………廉?」
送り主は廉。
文章はたったこれだけ。
『タスケテ。コロサレル』


