音楽室は教室のある棟の向かいの別棟にある。
渡り廊下を渡って音楽室のある校舎に入ると同時にピアノの音がして。
「……廉…」
それを弾いているのが廉だということがすぐに分かった。
廉は小さい頃、半ば無理矢理、光さん(廉のお母さん)にピアノを習わされて。
あたしはしょっちゅう、ピアノを弾く廉の横にいて。
だから音色で廉が弾いていることは分かるんだ。
階段を駆け上がり最上階に着く。
部活サボってピアノ弾いてたなんてバレたら先輩に大目玉食らうよ、廉。
と、心の中で呟く。
音楽室の前で深呼吸。
保健室のあの会話以来、まともに廉の顔を見るんだから。
緊張しないワケがないでしょ。
胸に手を当ててキモチを落ち着けたあと、
少し汗ばむ手でドアを開けた。


