「あのさ、1つ確認しておきたいんだけど」
その日の給食前。
トイレで手を洗っていると鏡越しに梢と目が合う。
「なに?」
「雫…まさかだけど、音無くんのことスキだったりしないよね?」
梢のあまりの真剣な顔に少し驚く。
「どうして?どうしてそんなこと聞くの?」
質問返し。
でも気になったんだもん。
梢がどうしてそんなことを聞くのか。
「だってさ、今日の体育の時間、ずーっと音無くんのこと見てたしさ。
ここ最近じゃ廉くんと話すことより音無くんと話すことの方が多いじゃん?
しかもいっつも笑顔でさ。
そしたら…スキなのかな、って考えるでしょ?普通。」
あたしは梢のほうに顔を向けた。
「ねぇ…梢?」
梢は首を傾げる。
「梢ってさ、竜馬くんと話したこと、ある?」
「ない。まったくないよ?」
それがどうしたの?と言わんばかりの顔。
「1度、話してみなよ。
そしたらあたしの気持ちがよく分かる。
それと、体育の時間、ずっと竜馬くんを見てたワケじゃないよ」
そう。違うんだ。
梢の言う通り男子の方を見てたのは事実。
でも竜馬くんだけを見ていたワケじゃない。
梢にも本人にも絶対に言わないけど、
廉のこと…見てたんだ。
体育やってるときの廉は、どの男子より輝いて見えるから。
………ってあたし!
何言っちゃってるんだろう…!
恥ずかしいなぁ…っ!!


