「ねぇ、ママ。好きだからチューするんでしょ?里海はシュンくん大好きだから、チューしていいんだよね?」
目をキラキラさせながらあたしに答えを求める里海の顔を見ていると、「ダメ」なんてとても言えない。
助けを求めたくて横に座る海里に目を向けると。
「………」
まるで役に立たない。
どんな時でも冷静沈着な海里も、愛娘のこととなると別で。
特にこういった娘の恋の話になると、平常心を保てなくなって、頼りがいがなくなる。
こんな海里を、最近少し可愛いと思ってしまう。
……とても本人には言えないけど。
そんなことを思っていると、「ふぇっ……」という海音(ミオ)のグズリ声が聞こえてきた。
「ああー……海音が起きちゃった」
急いでベビーベッドに駆け寄るつもりが、海音の声で意識を取り戻した海里に先を越されてしまった。
あたしは思わずその場に立ち尽くす。
「海音、ただいま。パパが帰ってきたから、起きてくれたのか?」
なんて、甘い声を出しながら一生懸命に海音をあやしている海里。
そのうち、海音の声が泣き声から笑い声に変わり、海里の腕の中で「キャッキャ」とご機嫌に笑い始めた。

