お家に帰ろう。

父親から話を聞いて、

遥が甘やかされている理由が、分かった気がする将人は、

そんな遥に対抗して、

“私も見て〜”

と言わんばかりに、
自然と、甘え方や要領の良さを身につけていった、明の性格も分かってきた。


しかし、
遥が中学受験をして、女子校へと進んだのをきっかけに、
音楽と関係する学校への、母の薦めを断り、
地元の中学へと入学した明は、
つまり、将人の後輩にあたることとなった。


それについて、上條家の誰もが、
哲司と同じ学校に通いたかったのだろうと思っているようだったが、
単に明は、
受験勉強や、きちんとしたピアノレッスンを受けなければならないことが、面倒なだけだった。


そうとも知らず、将人は、

必死に愛情を乞う、健気な少女を救おうと、
愛のキューピットになることを心に決めた。


まずは哲司を捕まえて、
可愛い妹のために、
親バカならぬ兄バカの本領を発揮するが……


「えー!俺?」

「そっ!で、テツは明のこと、どー思ってんだ?」


そんなこと聞かれたら、意識せずにはいられなくなって当然である。


クラスは違ってしまったものの、二人ともテニス部に入部したため、朝も帰りも、いつも一緒に居る時間、ぎこちなくなりつつも、なんとなくウキウキした。


ギャングエイジ…いわゆる小学校高学年時代に、早めの変声期をむかえた哲司は、身体つきも体力もグンと成長し、女の子からもモテはやされるようになっていた。