お家に帰ろう。

上條家の子供達は、幼い頃から、テニススクールに通っている。


これは、母の弥生がテニス経験者だったことが影響しているのだが、

自分がテニスをしたかった、
と言うことと、

“家族皆で、一つの話題から会話がはずむ光景”
イコール
“家族の繋がり”を意識した弥生の
ささやかな思いが込められていることでもあった。


このスクールで、いちばんの友達となったのが、合田家の奥様で、哲司の母だったと言うワケだ。


明と同い年だと知った母親が、
哲司もテニスに誘ったことが、
今日までの付き合いとなっている。


将人は中学にあがると、部活やつきあいが忙しくなり辞めていき、
高学年の遥とはレベルの違いからクラスの時間が変わってしまった。

それからは、
明と哲司の二人で帰ってくる約束になっていたのだが…


「俺、テニス辞めてサッカーやることにしたんだ。」

「そーなの?あんなに上手なのに?」

「俺は何でもこなすからさ、クラスの奴らに誘われちゃうんだよなー。」

「ふーん。」

「…それに俺、明の家来じゃないしさ!」

「なに?」

「好きで一緒に習ってるワケじゃないし!」

「知ってるよ、そんなこと!」


いつしか哲士も辞めていった。