お家に帰ろう。

「びっくりして、大声なんか出しちゃダメだよ。」

「さっき、ママの声も大きかったもんね。」

「うん。そのくらい大変なことなんだよ。」

「なぁに?」

「あのね、…俺のお母さんはね、明のお母さんとは別の人なんだよ。」

「え?」

「ホントのお母さんは、俺を生んでしばらくして死んじゃったんだ。」

「うそだーぁ。」

「ほんと。」

「なんで?」

「身体が弱いのに、俺を生んだからだって。」

「…」

「だからお父さんは僕のために、今のお母さんと結婚して、兄妹をつくってくれたんだってさ!」


明は目を丸くして黙り込んでいた。


「言ってること…分かるか?」


将人が聞いても、目を反らさず、ただコクリと頷いてみせるだけ。

なぜならば、

喋るにも、口どころか頭の回転も硬直してしまったようで、どうにも出来なかったのだ。


次第に身体が勝手に小刻みに震えだし、

「今の話、聞かなかったフリできるか?お母さんは“皆、自分が生んだ子供だ”って、頑張ってるんだからさ!」

そう言って、明の手をとった時、
やっと、明のその状況に気付いた将人は、
自分のために身体を振るわせる、小さな少女を愛しく思い、
とっさに抱きしめていた。


「ごめん!ごめんごめん!(本当のコトなんか言えねーよ。)ホントごめんな!」