その頃、
将人の部屋で、携帯電話の着信音が鳴り響いていた。


「はい。…おぉテツ!…え、今日?んー分かんね。なんで?……そーなんだ?ふー…あいよ。見てやるよ。…うん。じゃ、あとで。」


電話を切って床に置く将人は言った。

「おい、テツが来るってよ。」

「ここに?」

「なワケねーじゃん!」

「何しに来るって?」

「原チャリのカタログ持ってくるから、選ぶの手伝ってくれって。」

「頼られてんねー。」

「ふっ。」

「カワイんでしょ?弟が欲しかったんじゃないの?」

「……テツぐらいが丁度いい。」

「なんだソレ。」

「なぁ。テツが来るんなら言い訳に使えねーじゃん、市川くん。」


ベッドに仰向けのまま会話していた将人は、

「起きろって。早く服着ないとさぁ。」

と、上半身だけを軽く起こし、
背を向けたまま、無反応で隣に寝る、
明の顔を覗き込むのだった。