その夜、

明の部屋のドアをノックして、
将人が入ってきた。


「なに?チクリ野郎。」

「チクリって悪いことに使う言葉じゃね?悪いことしてたんだ?テツと。」

「じゃあマザコン君…悪いことって?」

「…悪くはねーか。」

「なんの用?」

「パソコンどーした?」

「あぁ、てっちゃんメモが置いてあった。データーがいっぱいだって。」

「もう古いしな。新しいの買えば?」

将人は机に座ってパソコンを開きはじめた。


「いいの?」

「ん?え、まさか俺が使ってたまんまにしてる訳じゃないよなぁ?」

「何もしてない。」

「破棄しろよぉ。」

「だって、めんどいんだもん。」

「…今、もっと使いやすいヤツ、いくらでもあんじゃんか。」

「これ使いやすいよ。」

「それは、使い慣れてるっつーんだよ。ったく、削除しとくぞ。」

「余計なとこ見ないでよ。」

「見ねーよ。」

「ふーんだ。」

「…」

「見られてマズいことは無いけど…」

「気に掛けてほしいんだ。」

「コソコソするのがイヤなだけ。」

「時と場合によるだろ…おまえはまだ未成年だし。」

「二十歳つったって学生のくせに…エラそーに。」

「酒と独立を認めてもらえるだけで十分だろ。」