お家に帰ろう。

弥生は卑屈になどなるタイプではなかった。


ただ時々、色々な場面で考えることがあった。


“あの子さえ居なかったら、どうなってたかな?”



将人の実母が他界した…


もちろん、弥生にそんな力があるわけがない。


でも、誰にも言えない話だった。


葉月を病院のベッドで見た時も、
幼い頃、心の隅に秘めていた気持ちを、思い出さぬよう必死だった。


本来なら、全くないはずの責任を感じて止まない弥生は、今、その二人の子供を育てている。


そして、新たな不安が弥生を襲う。


それは、遥のことだった。


遥は唯一、自分の生んだ娘。


この家の複雑な事情に巻き込まれてはいるが、
本人自体は決して不幸ではない。


が、その不器用な性格が、不幸をもたらすのではないかと、弥生は心配するのだった。


何かと卑屈になりがちな遥のを、少しだけ分かる気がする弥生は、どーしても甘やかしてしまう。


だから、将人が明の面倒をみて、明は自立心のある、しっかりした子に育ったのだと、そう思っていた。


おかげで二人は、本当の兄妹より仲が良く…
そんな二人を眺めていると、突然二人が自分を襲ってくるという夢を見たこともあった。