お家に帰ろう。

母親の弥生は、
血の繋がらない息子の将人と、
妹の娘である明を
実の子供と思い育てながら、
時折襲ってくる不安と、責任と言う言葉の間で戦っていた。

そんなこととは誰にも気付かれまいと、いつも明るく振る舞いながら。


弥生は小さい頃からスポーツ万能で、元気で明るく、日焼けした肌は見るからに健康的な、友達の多い娘だった。


年頃になった頃、
それなりに恋もするのだが…
その異性には、“一番の女友達”としか見てもらえず、
“女”として、その思いは伝わらなかった。


一方、妹の葉月は、勉強もスポーツも人並み。

ただ、
小さい頃から芸実家気質で、
葉月の作品が、区や都の主催する展覧会に出品されたことが何度かある。


ピアノが得意で、学校行事には、葉月が弾くピアノ伴奏は欠かさないものだった。


そんな葉月は、いろんなタイプの男性から好かれ、
弥生の同級生にもファンはいた。


それでも二人は仲の良い姉妹だった。


少し歳が離れていたのが良かったのかもしれない。

唯一、祖母のことだけをぬかせば…


葉月のことがお気に入りの祖母は“弥生には似合わないから”が口癖だった。


遊びに来る度、皆にお菓子と、
葉月にだけ、リボンやヘアピンを渡す祖母。


祖母を見返すつもりで家庭科の授業を真面目に受けたことが、今の弥生につながっているのかもしれない。