お家に帰ろう。

「ま、そりゃそーだ。」


二階へと上って行く将人の足音を聞きながら、

「なんだ。居たんだ。」

ボソッと呟く明。


そして、
ヘアーアイロンで髪を整え、鏡に映る自分をじっと見つめ…


「よし!」

急いで部屋に戻ると、一目散に電話をかけた。


「あ、あたし。ごめん。今日、行けなくなっちゃったんだぁ。…」



話しながら部屋へとやって来た明が電話を切るのを、ベッドに横たわったまま将人は待った。


「どした?」

「今日、バイトは?」

「夕方から。」

「それまでの予定は?」

「…寝るくらい。」

「じゃあ、あたしも。」


ドサッとベッドに腰掛けた明は、

「友達は大事にしないとね。あんまり遊べなくなっちゃうんだろ?」

上半身を起こし、子供をあやすように言う将人を、

「子供扱いしないで。」

おもいっきり睨みつけた。


そんな明の頬をさすりながら、

「恐い顔すんなよぉ。」

と、なだめる将人の指は、しだいに唇へと流れ…


キスを求め、明はそっと目を閉じた。


そして将人が、優しく顎を引き上げると、
その目蓋に、ぎゅっと力を込めるのだった。