お家に帰ろう。

中学を卒業した明は、春休みを満喫していた。

とは言っても、
父親はいつも通り仕事に出掛け、遥は部活へ。
母親も午前中はパートで、
将人にもバイトや付き合いがあるため、
お盆も正月もない春休みを、気楽に過ごせるのも、
この年限定の明だけだった。


そんな訳で、四月からバラバラになってしまう友達と、盛んに遊びに出掛けることに徹する明は、

その日も朝から支度に追われ、
洗面所のドアを開けた。


「うあぁ。」

「あんらよ…ガラガラガラぺっ」


そこには、バスタオルを腰に巻いただけで歯を磨く将人の姿が…


「なにやってんの、もー。」

「見りゃ分かんだろ。」

「なんで今頃、家に居るんですかって話!」

「今帰ってきたんだっつーの。」

「何やってんの?」

「昨日のバイトの帰りに友達んとこ寄って、くっちゃべってたらいつの間にか寝てて、気付けば朝!みたいなね。」

「…」

「は?」

「女も居たの?!」

「居ねーよ、ばーか。」


明にデコピンして洗面所を出て行く将人。


「怪しい。」

「何がだよ。全然だっつーの。」

「ふーん。」

「今日も出掛けんのか?ったく、毎日毎日…」

「だって、もう、あんまり遊べなくなっちゃうかなぁーとか思ってさ!」