お家に帰ろう。

「哲司、ちょっといいか?」

「んあ。」


部活にいく途中で、市川に呼び止められ、

「どした?」

「ちょっと、屋上まで。」

嫌な予感がするも、あとを着いていく哲司。


(呼び出しかよ!なんだ?明のことか?俺もう、抱えきれねーぞ。)


わざわざ屋上に誘う市川から緊張感が伝わり、
階段を上る途中、色々な事を考えてしまう哲司は、自然と無言になっていく。


(イッチーも明の親父のこと知ってんだったなぁ。アレから詳しいこと聞きにこなかったからソレか?…ん?言っちゃマズいのかな?マズいんだよなぁ、やっぱ。)


ガチャン。

そして、市川によって、その扉は開かれたのだった。


「あのさぁイッチー、」

「明ちゃんて今どんな?」

「え…んー、元気でやってるよ。色々あったけど、おかげで今は家族円満だよ。」

「ふーん。そーなんだ。」

「ごめんな、何も報告しなくて。」

「どーしたかと思ってたけど、家族のことには俺なんかの出る幕ないから。」


市川は金網の方まで、どんどんと歩いていく。


「そーなんだよ!」


これとばかりに市川の話に乗っかる哲司は、

「いくら幼馴染みでも、さすがに俺もさー。」

上手く誤魔化せたと思った。