お家に帰ろう。

帰りのホームルームが終わると、慌てて帰って行く哲司は、
校門を出て、だいぶ離れた所まで来てから携帯電話を取出し、

「もしもし、俺だけど」

将人に電話をかけた。

「おう。」

「今、そっち行くよ!」

「いーや。電話で済む話だよ。」


その頃、哲司の教室を覗く彼女が、
「ねぇ、哲司は?」

クラスメイトを捕まえ、たずねていた。


「んぁ、帰ったよ。」

「部活?」

「アイツ今日、休むって!急用だってさ!」

「え?なんの?」

「知らね。なんか、ケータイ見ながらブツブツつぶやいてたよ。」

「ケータイ?…なんかのサイト?」

「知らねーって。」

「…ふ〜ん…」


そして哲司は、そんな頃、すでに川沿いの緑道をゆっくりと歩きながら、将人の話を聞いていた。


「近くまで来てたんなら言えよ!あのあと明が来たんだよ。」

「…でも明は行ってないって」

「それなんだけどさ、ちょっと深刻な話し合いをしなきゃならなかったから…ほらアイツ、実の父親と会ってたって言ってたじゃん?そのことで、ちゃんと話しときたかったんだ。」

「あー」

「そんなこと親は知らねーしさ、知ったらマジでショック受けると思って…これでも俺、長男だから。」

「そーゆーコトだったんだぁ。」

「だからテツもさぁ、」

「わかってる。言わないよ。」