お家に帰ろう。

「ただいまぁ。」


家に戻った明は、玄関の扉を開けると同時に、煮物の香りに誘われリビングへと直行した。


「遅かったわね。」

「うん、ちょっと。」


ソファーに荷物を置くと、
父、母、遥の本物親子が囲むテーブルに腰をおろす。


「手、きれい?」

「あ、そうだ。」


立ち上がりキッチンで手を洗い、ご飯をよそいながらテーブルを眺める明。


「…」

「どうした?」

「うううん。何でもない。」


父は、あの騒動を知らない。


父の口から告げられるまでの秘密として、遥も、初めて上條家の秘密に関わることで、少しだけ仲間意識のようなものに浸っていた。


どこの家にも、秘密の一つや二つはあるものだろう。


ただ、この家の秘密はややこしく複雑だ。


将人の実母のことを知らない遥。

実は、明も知っているとは両親は知らない。


そして父親だけが、明の出生話を皆が知ったとは知らず、
なんと哲司が知っているという事態に!

さらに、明が実父と会っていた事は、将人と哲司にバレていて、
自分のことで精一杯だった遥に、ソレを気付かれているかどうか、疑問とされているところなのだが…

とにかく色々なことがありすぎて、いつかボロが出て当然だった。