お家に帰ろう。

二人が家に着いた頃には、
もう、哲司の姿はなかった。


気まずいのは、皆が同じだったが、
強情っ張りな遥は、それでもまだ納得がいかないらしく、
部屋に籠もって、出て来ない。


リビングには、弥生から、
自分の存在の意味や、実母・葉月の思い出話を聞く、真剣な面持ちの明の姿があった。


将人から聞いて知っていることでも、弥生が語ると、また新鮮に感じれた。


今日まで、どれだけこの時を想像し、待ちわびたことか……


将人のコトで、少し免疫はできていたにしても、
自分のコトとなると、やはり違うもの。


将人の存在だけが頼りだった明の、それまでの心細さから、今、解放されたこの時…

実父と会ったことを言えずにいた明と、その周囲の関係が少しずつ軋みはじめることとなった。

まるで、錆びた歯車が無理矢理、動かされているように…。


そうとも知らず、盛り上がる二人をリビングに残し、将人は二階へと向かう。


部屋に入る前に一度、遥の部屋のドアをノックして、

「おーい。生きてっかぁ?」

しかし、なんの反応もなく、
将人は自分の部屋へと戻っていく。


そして、早々に携帯電話を取出すと、

「あ、テツ?俺。今日はサンキュー。でさ、ちゃんと説明してくんね?あと、遥の男…どこの誰っつったけ?」


全てを聞き出し把握した。