お家に帰ろう。

将人が明を見つけ出したのは、
空港のロビーだった。


偶然にも、
インフォメーション近くの椅子に、ひょっこりと座る明が目に入ってきたのだ。


「おい。明。」

「…まーくん!…どーして?」

「前に言ってたのを思い出した。行くつもりだったんだろ?幸福駅…だったっけ?」


明の瞳が、涙で滲んでいくのが分かった。


「独りで行くなっつーの!」

そう言って、明の頭をクシャっと撫でる将人の手は、大きくて温かくて…いつも優しい。


「飛行機のチケット、とれなかった…」


勢いで、空港に辿り着いた明は、電車の切符のように、手軽にチケットも手に入るものと思っていた。


「一緒に行こう。…今日はムリだけど。」

「うん」



そんな明に、言いたい事が山ほどあった将人だったが……

「とにかく…早く帰ろ。皆心配してる。(サイトの件を隠していたこと。遥の彼氏を騙して、探偵の真似事をしたこと。そして何より…実の父親と会ったこと…会って何を話したんだ?)」


いつも、冷静過ぎるほどの明が、こうして、取り乱したのだから、よほど応えているのだろうと、
今日のところは何も聞かずに、まっすぐ家へと連れて帰る将人だった。


そう、
明が秘かに企む事など、
全く気付きもせずに………