お家に帰ろう。

上條家のリビングは、
三人もの人口が居るとは思えないほど静まり返っている。


「あ。ごめんねーてっちゃん。何か食べるよねぇ?」

デリバリーのチラシを引っ張り出しながら弥生が言った。


「いいよ弥生さん。それどころじゃないんでしょ?俺は大丈夫。…つか、俺が何か買ってこようか?」

「んー…何か作れば良いんだろうけど、何も手につかなくて…」

「だよね。うっし!じゃあ、何か見てこようかなぁ!」

と、哲司が立ち上がった時だった


トゥルルルル…トゥルルルル…


リビング中響き渡る電話のコールに、3人が一斉に反応する。


「もしもし!」


中でも、慌てて駆け寄る弥生は、2コールで受話器を取ると、
名乗りもせず、相手を尋ねた。


『あ、俺だけど』

「将人!?」

『うん。明、いたよ。』

「いた!?どこに?」


その瞬間、ホッとした表情を見せ、遥と哲司に目配せをする弥生。


哲司も遥に微笑みかけ、
ソファーに歩み寄ると、その隣に腰を下ろし言った。

「さすがマサ君。」

「明のことだからね。」

「…前から思ってたんだけど、それって嫉妬?」

「…前から私は仲間外れだったの!」

「本当の仲間外れは明だったけどね。だからマサ君、明に優しかったんだなぁ。」