お家に帰ろう。

「俺は!…おまえが心配なんだ!」

「心配?どんな風に?」

「それは、おまえ…」


さっきまでの勢いは何処にいってしまったのか、途端に口籠もる将人は、


「どうせ、同情にしか思ってないんでしょ…」

「え?」

「あたし知ってんだよ。全部知ってんだから!」

「おまえっ…なんで?」

「言ったじゃん!あたしがずっと、まーくんのそばにいてあげるって!なのに…忘れちゃったの?」



色気もムードもない、喧嘩ごしの明の言葉だったが、

その感情をむき出した状態が手伝い、

「きゃっ」

明の腕を掴み、勢い良く抱き寄せた。


「なんだよ…いつから知ってたんだよ?」


抱きしめたまま訊ねるその腕に、自然と力が込められていく。


ずっと抑えてきた気持ちが、この時とばかりに腕へと注がれ、自分でもコントロールができないでいる。


「苦しいよ…」

「あ、ごめん!」


素に戻った将人は、
肩の高さで両手で広げ、明を解放すると、周りをキョロキョロ見渡した。


夏の陽はゆっくりと沈み、辺りはまだ、だいぶ明るく……
取り乱した自分の決まりの悪さに、深く動揺しているのがわかる。


「こんなこと…兄妹なんだから、どーってことないでしょ!」