お家に帰ろう。

林は練習を再開した。


「片想いなのぉ?もしかして彼氏がいる人とか?」

少し離れた所から、しつこく聞く明。

すると、

「…そ。しかも歳上。」

あっさりと答える林。


「あちゃー。」

「…」

「そんなんじゃ、いつになっても彼女なんかできないよぉ、林くん!」

「別にいーよ。」

「またまたー。」

「そーゆー明ちゃんはどーなんだよ。」

「あたし!?…あたし今、好きな人いないの!…理想はあるけどね。」

「ふーん。」

「…林くんはさ、つきあったことはあるの?」

「“ある”とは言えないなあ、アレじゃ。」

「じゃあ、キスしたことは?」

「…」

「なに?」

「今、そーゆーことに興味を持つオトシゴロ?」

「そーゆーわけじゃ…」

「…」

「ね、してみる?キス!」

「!」

「いざという時のために!」

「そんなの、なんとかなるよ。」

「そーかな?」

「何を言ってるか分かってる?だいたい女の子って、そーゆー相手は大切なんじゃないの?」

「別に、初めてじゃないもん。」

「…そーなの?」


明は、幼い頃の哲司とのコトを思い浮べていた。