「あ、マサ君?俺」

「なんでテツが出んだよ!」

「忘れてったみたい。」

「ちっ!」

「あ…」


またも電話は切られた。


「なんだっつーんだよも〜!!」


頭をかきながら遥を見ると、
まだ何か言いたそうな顔をしていて…

「あのなぁ!吉岡は明とやろうとしてたの!遥のことどう思ってたかは知らないけど、明のことは勘違いしてたみたいだよ!遥から文句ばっか聞かされてたからさぁ!」

「本当のことだもん!」

「本当のこと?じゃあ教えてやるよ!明には本当の親父が居るんだと!どーゆーことかは知らないけど、それを知らないのは遥だけだってよ!」

「…そんな…」

「知らん!もう俺は知らないからな!あとは自分で聞けや!俺だって、まだ信じられないんだ…こんな重要な役回り…責任持てねーっつんだよ!」


あまりの状況の変化に、逆ギレする哲司。

こんな哲司を、今まで誰か見たことがあるだろうか?

これをパニック状態と言うのだろう。


そして遥に背を向けると、玄関の扉を開け外に出て、すぐ前の段に座り、誰かの帰りを待つのだった。


(ここまできたら、俺にだって真実を知る権利がある!)


と言うか、ただ単に、このままでは気になって、眠れぬ夜を迎えるであろう自分が目に見えただけのこと。


それに、あんな遥を置いて、帰ることはできなかったのだ。