とぼとぼと階段を上る哲司は、
遥の部屋の前に立ち、ドアをノックした。

が、何の反応もない。


「遥?…開けるよ。」


軽くドアを開け、1歩分だけ踏み込んだ哲司を

「入って来ないで!」と、押し出し、
力一杯ドアを閉めた遥の瞳や頬は涙で濡れていた。


「あっぶね…おい、遥!…話くらい聞けよぉ。」

「…」

「…俺も妹を持つ身として良く分かるよ。特にうちなんか歳が離れてるだろ…すべてが妹中心だし。でも、妹だから許せてるのかな?もし弟だったら、また違ったのかもしんねーなぁ」

「…」

「それにしても、やっぱアレは言い過ぎだよぉ。明だって、自分が生まれてきたことに悩んだ時期が有んじゃねーの?」

「…?」

「よく分かんねーけど…だって、俺だったら耐えられねーもん。」

「…(何の話?)」


意地っ張りな遥は、哲司の話に疑問を抱きつつも、まだ、話し返す訳にもいかずにいた。


「…無視かよ。」


そんな哲司は壁に寄りかかり、携帯電話を取り出す。


「…あ、俺。…今まだ明ん家。…うん、大変だったよ!明ちょー責められて、出てっちゃった。…母親が追い掛けてったから…うん。留守番…つか、監視?…」


(誰と喋ってんだろ?)


所々しか聞こえてこない話が気になり、
遥は、耳を傾けていた。