家の前で深呼吸を一つしてから、恐る恐るドアに手をのばす明の隣には、約束通り哲司がいた。


「ただいま…。」


そっと覗き込み、中の様子を見渡しながら玄関へ足を踏み入れた時

もの凄い勢いで階段を駆け降りる遥の足音に、二人は圧倒させられた。


「ど、どうした?」と、哲司。

すると遥は、
無表情で二人の前に立ちはだかり
少し震える声で言う。


「…翔ちゃんが、もう会えないって。…理由は妹に聞いてくれって…どーゆーこと?」

「え、あ…」


明が動揺しているのがわかり、

「あのなぁ、遥…実は今日、」

代わりに答えようとした哲司が、前に踏み出した瞬間、

「何があったの?!なに言ったのよー!!」

「きゃっ」

遥は明に掴み掛かっては、前後に揺さぶり押し倒した。


「遥!違うんだよ!」

「あんたはいったいなんなのよ!私の邪魔ばっかりして!!」


そう言って、まだ掴み掛かろうとする遥を押さえながら、

「落ち着けよ遥!!ねー!!弥生さんいるー?!」

哲司はリビングに向かって助けを求めた。


ふざけ合いをしているものと思っていた母、弥生は、
その状況を目にしたとたん、慌てて駆け寄り

「何があったのっ!?」

と、後ろから遥を抱きかかえ込んだ。