お家に帰ろう。

「あたし、家に帰るの怖いんですけど…」


ため息を吐く明に、何か言葉を探すも見当たらず、ただ背筋を伸ばす市川。


すると哲司が、ストローをくわえたまま言った。

「家ん中までついてってやるよ。」

「…うん…」


この時、人間関係に恵まれた自分を、つくづく幸せ者だと思う明だった。


自分からフッて別れた元彼氏が、こうして目の前に座っている…


「(ん?)今更なんだけど…市川くんはなんでいるの?」

「あーそうだ!書き込みの話の出どころだったっけ?」

そう言って、携帯電話を取り出し、彼女と連絡をとろうとする哲司に、

「後ででいーよ!」

と、慌てる市川。


「なに?」

「イッチーがさ、おまえのこと心配するあまり、人の女、疑ってんだよ。」

「気になるだけだよ!」

「明が?」

「!噂の出どころが!」

「あ、そ。だってよ明!別におまえのためってワケじゃないってさぁ!」


そんな哲司に、明はフキンを丸めて投げつける。


「アハハ、なんだよ!」


市川も真似して哲司を攻撃すると、やっと少し笑いが起こった。


「なんだよ二人してさぁ〜!じゃあ結局誰なんだよ?あの男は違ったってことだろ?」

「…そーみたいだね…」


またも、三人は黙り込むのだった。