明は驚いた。

年頃の男子がしていて当然の会話だと、分かってはいるのだけど、
身内が、顔を歪ませながら、楽しそうにソレを語る姿は、見ていて何とも気持ちが悪かった。


「ひゅー!」

後輩達が騒ぎだし、

「ばっ!冗談だよ!シーシー…」

なんとか静まらせ時、

「高橋先輩とは?」


グッドタイミングな質問が、廊下に響く。


(高橋先輩?誰?)


「あー…アイツ来る?」

「いや、今年は来てないっすねぇたしか。」

「あれっすか?やっぱ、続かないもんすか?」

「高校違っちゃったからなぁ。結構早いうちに別れたよ。」

「ひで〜!」

「ばーか。俺が振られたんだよ!」

「またまた〜。」


(へー。まーくん、彼女なんていたんだぁ。)


そこへ、

「あー。俺、一緒に居るトコ見たことあるかも!」

3年に混じっていた哲司が言うと、

「マジで?なんか変なことしてなかった?」

「なんすか、変なことって?!」


思春期の男子達は、またも興奮していた。


(ったく!また始まった!…確かに、前にチラッと聞いたことあったや。…でも、意外。)


それは明にとって、
将人に対し“男”を意識させはじめた出来事となった。