お家に帰ろう。

「今度、久々に行って顔出してみよっかなぁ…中学。」

「マジ?来なよ来なよ!でさ、ギャフンと言わせてやってよ〜。俺、ムカつく先輩いんだぁ。」

「べつに、おまえはのために行くんじゃないから。」

じゃあ何のため?

まさか、監視に行くとは言わないが、
明にも内緒で、ひょっこりと顔を出した将人は、
後輩達の練習に軽くつきあった後、帰りのミーティングの最後にコメントを頼まれ、
照れながら、総体に向け、応援の言葉を投げていた。


「それから男子部員!…1年生の俺の妹には、ちょっかい出さないように!」

「!あはははは…」


明は、こんな将人を見るのは初めてだった。


「それで先輩、高校のテニスってどんなです?」

「ん?あー、俺はテニス王国校落ち組だから…でも、硬式はやっぱいーぞ!」


将人の周りに後輩達が集り、少し先輩風を吹かしてはいるが偉そうには見えず、皆に慕われているのがよく分かった。


「そっか、おまえら3年も、そろそろ進路決める時期かぁ。」

「まあまあ。ところで先輩、これは?!」

その中の一人が小指を立てて聞いた。

「んなもん、居るに決まってんだろ?」

「えー!じゃあじゃあ、これは?」

調子にのって、今度は中指を立てる後輩に、

「ばーか。」

と肩を組み、

「当たり前だろ。」

と、小声で囁いてみせた。