「おまえんち、最近なんかあった?」

上條家の屋上で、
長椅子に寝そべりながら哲司が言う。


「まーくんが出て行ったけど。」

シャボン玉をしながら答える明。


「それは知ってる。バイクの雑誌どっさり置いてったから。」

「じゃあ何?」

「だってアレ。」

テーブルを指差して、

「いつ来ても飲み物なんか出なかったじゃん。ガキん頃はカルピス作ってくれたのにな〜弥生さん。」

「あ〜。なんかね、あたしとあんたのことが心配みたい。」

「なんだそれ。」

「“もう高校生なんだから”だってさ!」

「あ!」

「ん?」

「そー言えば、マサ君もなんか言ってたなぁ。」

「なんて?」

「よろしく頼むって。」

「何を?」

「知らん。」

「なんじゃそら。」

「あとさ“悪いな”って…どゆこと?」

「本人に聞いてくれ。ほとんど毎日、夕飯食べに来てるから。」

「それって、一人暮らしの意味なくね?」

「さぁ〜ね〜。」

「…あ〜!なるほど。そーゆーことね。」

「変なこと想像してる。」

「変なことじゃねーよ。マサ君もお年頃だもん。」

「童貞が何言ってんだか。」

「え?なにか?」

「なんでもな〜い。」