待合室のドアを開けると、椅子に座った女性の後ろ姿が目にはいった。

「あ、あの、吉沢さん…ですか?」

亨の声に、その女性は振り返った。

女性の姿を見て亨はおどろいた。

目の前にはあの日のままの美紀がいたからだ。

「み、美紀…。」

亨は肩に掛けていたバッグをその場に落とし、その女性に抱きついた。

「きゃっ。 ちょ、ちょっと止めてください!」

そう言われ瞬間、亨は突き飛ばされた。

「初対面の人に抱きつくなんてどうかしてるんじゃないですか!
昔はよかったのかもしれないけど、この時代ではありえないですから。」

亨は我に返り、女性に謝った。

「す、すいません!
知り合いかと思って…
すいませんでした!」

亨はすぐに立ち上がり頭を下げた。

「初めまして。吉沢亨です。 宜しくお願いします。」

「吉沢美樹です。長い間眠っていて大変だと思いますけど、頑張ってくださいね。」

軽く挨拶を交わし、二人は表に止めてある車に向かった。

亨の第二の人生が動き出した瞬間だった。