「まず、いまこの時代で決められている延命措置法についてです。」

亨は延命措置法と書かれた資料をパラパラとめくった。

「この時代では、人体の冷凍延命医療は珍しくありません。
その為、吉沢さんのように解凍処置がとられた際に身内、知り合いがいないということが起こりうるんです。」

亨は何も言わず、医師の話しを聞き入った。

「そこで患者の戸籍を明確化し、子孫のいる場合はその子孫が面倒を見るという法律ができたんです。」

「もし、子孫がいない場合は?」

「その時は国立保護施設で対応することになります。で、吉沢さんの場合は…。」

亨は下を向いたまま、視線だけを医師に向けた。

「子孫がいらっしゃいましたので、その方に面倒を見てもらうことになります。」

「そうですか。子孫がいるんだ…。」