「吉沢さん、わかりますか? 吉沢さん!」

自分を呼ばれる声に亨は静かに目を開けた。

「ここは…?」

「国立研究施設内にある病棟ですよ。」

その言葉に亨は小さく頷いた。

「そうか…。 あの時車に跳ねられて…。
美紀は? 美紀はいますか?」

よく聞き取らないと聞こえないような小さな声で亨は問いかけた。

それを聞いた医師は一瞬難しい顔をした。

「大丈夫ですよ。いまは体調を戻すことに専念してください。まだ治療後間もないんですから。」

それを聞いて亨はまた眠りについた。