秋の訪れと共に、店頭には様々な花が並ぶ。
彼岸用の仏花、ハロウィンのカボチャ、そしてコスモス。
近頃は、チョコレートコスモスが流行っているが、やっぱりコスモスはピンクに限る。
美麗、乙女の心、調和という花言葉にふさわしく。
…妻が好きだった花なんです。
そのお客様は、月命日になると奥様の墓前にコスモスを手向けている。
若いのに、かわいそう、いつも私はそう思っていた。
なのに、花屋の店主と奥さんは人目も憚らず、べたべたしていた。
花に水をやる奥さんを、後ろから行って胸を揉んではスカートを捲り上げ、我慢出来ずに、「あぁん、まだよ」と、これを私は、ほとんど毎日見せ付けられている。
花屋の朝は早いから、夫妻は私に店番をさせ、昼寝と称して日中からSexに耽るのだ。
すぐ近くで好きな人が、奥さんとしている…。本当は、いても立ってもいられない。
だから、私は毎日家で貴方を思いながら、一人でオナニーをして眠るの。
抱いて欲しいのに。
今度はいつ私を抱いてくれるの。
悶々とした日々が続いた。
そんな私にも、一瞬の幸せが訪れる事になった。
奥さんが、しばらく里帰りする事になり、私と彼だけで過ごす日々が出来そうなのだ。
「たまには、旅行にでも行くか?」
私は、コスモスみたいに顔を桃色に染めた。
奥さんが出掛けた後、店を早々に閉め、翌日は臨時休業を決めた。
ロマンスカーで箱根に向かう車内、彼は私の手をずっと握っていた。
この人は、私の事など愛していない。
奥さんとのSexに飽きたから、私とのアブノーマルな情事に溺れたい、それだけ。
それでもいい、だから…。
抱いて下さい。
登山鉄道に乗り換え、芦ノ湖畔のホテルにチェックインをした。
彼との旅行なんて、最初で最後かもしれない。
だから、私は思い切り彼に甘えた。
肌をコスモス色にして。彼の身体を貪った。