『うん…。』
立っているのは辛いので、そばにあった椅子に座ると、稜斗が近くにあった体温計をあたしにわたしてきた。
制服の第二ボタンまで開けて体温計を左脇にさすと、稜斗が急に言い出した。
「うわ…熱計ってるときの唯、エロい…。下着まで見えてる。なんか、誘われてるみたい…。」
「おいおい、稜斗。頼むから俺の前でヤんなよ?目のやり場に困る。」
『あのねっ…!勝手に変な方向に行かないでくれる?あたしはただ体温計ってるだけで―――』
ピピピピピ――…
あたしの言葉を遮る様に体温計の音が鳴り響く。
タイミング悪い。
脇にさしてあった体温計を取り出し、文字盤を見る―――
『あ…。』
「「え?」」
文字盤に書かれている数字は、三十八度二分。完璧"熱"決定。
「あー…やっぱり熱だ。担任に言っとくから早退すれば?」
『うん。…そーする。』
「まじ!?じゃ俺も唯と早退する!」
手を挙げて喜ぶ稜斗。
人が熱出してんのにあんまうるさくしないでよ。

