キスの魔術師



―「あたしが大事なら、アメリカに行って」―



そう言ってくれて、嬉しかった。


…だけど、何年の付き合いだと思ってんだよ。



ハイジに言われて教室に戻ろうと思った。

だけど、ああ言ったハイジが気になった。

だから、俺は戻るふりをして屋上のドアにもたれて座っていたんだ。



すると案の定、時間が経ってからハイジの泣き声が聞こえた。



本人は頑張って声を押し殺してたけど、その雰囲気と鼻のすすり具合でわかった。

ハイジの泣き顔はあんまり見たことがないし、それほど重大なんだって思った。






だから俺は、ハイジが行くなっつったら行かねぇよ。




本当はアメリカ行きてぇけど……


俺の大切な夢だけど………


だけどやっぱり、ハイジは大事だ。





「……」




俺はゆっくりと立ち上がって、教室への道を進んでいった。







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