暑い
目が廻りそうだ
茹だる暑さも感じさせない

屋上
二名
有り


いや、暑そうな顔をしないだけだ

本当は暑いのだ

ジリジリ太陽が攻める

「このまま死んでしまいそうな暑さね。」
素直に彼女は答えた

「そうだね。」
彼が考えているとことは決まって死体のことだった

パタパタと手を扇いだ

僕ね、
それから口を開いた
「僕ね、母を殺したんだ。死体は本当に汚い。この前君はどんな死に方がいいか聞いたよね?母は溺死だ。もう醜い顔だったよ。僕は絶対溺死はしたくないね。」

急に話し出した彼に驚いた

「あら、そう。溺死は確かに皮膚が膨らむから一番醜いかもしれないわ。その…殺した母はどこに置いてあるの?」

「僕のタンスの一番下に閉まってある。身体が大きいからしまうの大変だったんだ。」
「よく閉まったわね。でもそのままにしとくと腐食が進んで虫が集るわよ。」

真剣に話す高校生

真っ青な青空雲が泳ぐ

「うん。だから、今日お別れをするよ。醜い生物と。」

「大変ね。でも楽しそう。そういえばあの犬は元気?」

話が急に変わった

「元気だよ。犬、嫌いなんじゃなかったの?」

何らさっきと変わらない二人

高校生

他愛のない話


「あの犬が探していた白い箱、見つけたわよ」

「なにそれ。そんなのうちの犬が探してるわけないじゃないか」

ほとんど無表情な二人は

屋上だとよく話すが


教室で二人が話す日は
なく、瞳は死んだままなのだ


彼女の真っ直ぐに伸びた黒髪は未だに首にへばりついたまま



蝉の声がうっとおしかった。