彼が立ち去ろうとした。




「待って!!」




私はつい呼び止めてしまった。




「あ?まだなんかあんのか?」




「あのぉ……道に迷ってしまいまして……」




フッと彼は小さく笑い、私に近づいて、耳元で囁いた



「いいよ……教えてあげる。お礼はお前でいいから……」





「なっ……!」




顔が赤くなるのが自分でもわかった。



「や、やっぱりいいです!他を当たります!」



私は逃げようとしたが、腕を捕まれた。



「嘘」



「ふえ?」



「で?どこ行きたいんだ?」



え?タダで教えてくれるってことかな?



「えっと、海の家をやっている里中 郁哉さんのところです。」