──春、と切れ切れの声で呼びかけたのはいつだったか。目の前の春は大きな目をもっと大きく見開いて俺をみていた。




「春、どこ…行くの、」




ぜぇぜぇと息を整えながらも俺は春の手首を捕まえたまま動かない。

…春もよほど驚いたのか目を点にしてその場に立ち竦みながらも俺を見ていた。




「千架く…女の子と、遊ぶんじゃないの?」

「…ううん。春を取り戻しに来たの。」



「───どうして?」




───どうして?


春の不安そうにそう呟く表情に、俺もその質問を返したくなる。

…彼女だから他の男から取り戻しに来て、なんで…“どうして”?