安っぽいホテルで、足を開いた女が誘う。
「ねぇ、早く」
「もう我慢できない」
「今日安全日なの」
安全日?
俺なんか365日安全日だよ。
これからは生で中出しし放題じゃないか、最高だな。
増田なんて泣いて羨むんじゃないか。
何のリスクも伴わない生での挿入に、心理的興奮はなかった。
忙しなく機械的な動きを繰り返した後、急に不安になって腰を引く。
「もう、何やってんのよ」
苛立ちを隠さない女の声に急かされながら、俺は今更ゴムを被せていた。
万に一つの可能性を恐れて?
違う。
知られるのが怖かった。
お前は男として役に立たないと、生物として欠陥品であると。
その事実を突き付けられるのが、何より怖かった。
今更思い出す。
幼い頃ヘビースモーカーだった筈の父が、ある時期を境に急に煙草を止めた事。
俺と梨果の付き合いを知っていながら、一度も避妊に関して咎められなかった事。
知ってたんだ。
全部知ってたから。
悔しくて、情けなくて、惨めで。
萎えそうになる体を叱咤した。
女がイって、俺もイって、金を置くとシャワーも浴びず、最低限着衣を整えて飛び出す。
生ゴミの臭気が立ち込める路地裏で、吐きながら泣いた。
不妊の話を聞いてから、初めてだった。
「ねぇ、早く」
「もう我慢できない」
「今日安全日なの」
安全日?
俺なんか365日安全日だよ。
これからは生で中出しし放題じゃないか、最高だな。
増田なんて泣いて羨むんじゃないか。
何のリスクも伴わない生での挿入に、心理的興奮はなかった。
忙しなく機械的な動きを繰り返した後、急に不安になって腰を引く。
「もう、何やってんのよ」
苛立ちを隠さない女の声に急かされながら、俺は今更ゴムを被せていた。
万に一つの可能性を恐れて?
違う。
知られるのが怖かった。
お前は男として役に立たないと、生物として欠陥品であると。
その事実を突き付けられるのが、何より怖かった。
今更思い出す。
幼い頃ヘビースモーカーだった筈の父が、ある時期を境に急に煙草を止めた事。
俺と梨果の付き合いを知っていながら、一度も避妊に関して咎められなかった事。
知ってたんだ。
全部知ってたから。
悔しくて、情けなくて、惨めで。
萎えそうになる体を叱咤した。
女がイって、俺もイって、金を置くとシャワーも浴びず、最低限着衣を整えて飛び出す。
生ゴミの臭気が立ち込める路地裏で、吐きながら泣いた。
不妊の話を聞いてから、初めてだった。

