種のない花(15p短編)

 自分の置かれている状況をポジティブに受け止めようと考えた俺は、現在、男女六人で煙渦巻くカラオケボックスに居る。


「やだぁ、冗談ばっかりぃ」


 男友達二人と、今日初めて会う女三人。

 この中では一番男前だと思われる中島に身を擦り寄せ、女が猫なで声を出す。
 増田はそんな様子を、煙草片手にニヤけながら見ていた。

 合コンというよりはヤリコン。
 言い出しっぺは、この中で一番遊び慣れているであろう増田だ。
 中島は可哀想に。良い餌にされている。


「ねぇ、何飲んでるのぉ?」


 中島に相手にされず諦めたのか、派手な化粧と脱色でパサついた頭の女が、俺の腕に指を絡める。


「グレープフルーツサワー」


 酒を飲むようになったのはつい最近の事。
 ビール等の美味さは未だ理解できず、こんな軽いアルコールをちびちび口に付ける。

 味はよく分からない。
 すぐ側で増田がふかしている煙草が臭い。


 なぁ、お前知ってるか。

 喫煙者は非喫煙者に比べて、精子の数が一割から二割弱減るんだってさ。
 運動率も下がるんだと。

 吸ってるお前だけじゃない。男だけでもない。
 お前の出した煙を吸った奴等、みーんな害を受けるんだ。