種のない花(15p短編)

 自分の身体の事を初めて、他人に話した。

 ばつの悪い母親は娘を連れ帰り、教師達はこの件を不問にした。
 酒も飲んだし、女とも確かにヤッたのに。
 彼等の表情にありありと浮かぶ同情が分かって、ここから消えたくなった。


 教室に戻ると、俺が扉を開けた途端、静まり返るクラスメイト。
 誰かが立ち聞きでもしに来たな。
 俺だって逆の立場なら、きっと面白がって噂していた。

 黙って席につくと、ニヤけ顔の増田が寄ってくる。


「気にすんなって、またヤろうぜ。
生で中出しし放題なんて、最高じゃん」


 生まれて初めて、人を殴った。

 増田なりに気を遣って言ってくれたのだと、分かっていたのに。
 自分だって同じ事を考えていた癖に。


 そのまま早退したが、親に心配をかけたくなくて、適当に時間を潰してから帰宅した。
 両親にも学校から連絡が行ったようだが、それについて呼び止められる事もない。
 ただ、腫れ物に触るような空気が伝わってきて、自室に閉じ籠っていた。