白き砦〈レイオノレー〉

とっさに手綱を引き絞る。

 見るとそれは、真っ白い衣装をまとった少女ではないか。

 少女は、びっくりしたように騎馬の主を見上げた。

 フロベールも少女に目をやった。

 それは何という聖らかな美しさであったろう! 

 金色の巻き毛、透き通るような白い肌、白い衣装――

 少女の周りを取り巻いている空気さえもが、ぼうっと白い光を放っているようだ。

 もしかしてこれは、この庭に魅せられて舞い降りてきた天使にはあるまいか――

 思わずそんな考えにとらわれてしまうほどの、常軌を逸した美しさだ。

 少女は神秘的な紫色の瞳を見開いて、こちらをじっと見つめている。

 フロベールは、はっと我に返ると、怪我がなかったかどうかと口を開いた。

 が、あまりに衝撃が大きかったためか、言葉が声になって出てこない。

 庭の外れで呼び子が鳴り響いた。

 誰かが何か発見したらしい。

 フロベールは反射的に手綱を打つ。

 馬はすぐさま向きを変え、呼び子の甲高い音が鳴った方角へと走り出していった。

 白い衣装の少女は、立ち止まったまま、軍馬に乗った少年騎士の去っていく姿を見送った。

 と、その背後に、ガサガサと何か大きなものが近づく気配がする。

 危険を察してとっさに振り返ったが遅く、腹部に強い衝撃が走った。

 たちまち目の前が真っ暗になって、そのまま意識が遠くなっていった。