白き砦〈レイオノレー〉

 半時ほど経って、ようやくデュークは寝室から出てきた。その顔は心なしか青ざめてい

るようだ。彼は少々疲れた声で言った。

「あの者の亡骸は、のちほど引き取りに参らせる」

 フリーラインは承知したというように頷いた。デュークは続けた。

「貴公の尽力、陛下に代わって深謝申し上げる。おかげで大事に至ることなく成敗するこ

とができた」

 するとフリーラインは、部屋付きの侍従に目配せた。侍従は隣室へ入り、ひとりの姫君を伴って戻ってきた。フリーラインは姫君に目を向けて言った。

「わたしは、ここな姫君を守ろうとしたに過ぎぬ。いわば自分のためにやったこと。ゆえ

に貴国の王には、くれぐれも謝意など示されぬよう伝えおかれよ」

 ということはこの姫君が、先ほど塀の外で賊に襲われ、懐剣を落としていった姫君か―

デュークはそんなことを思いながら、姫君に視線を向けた。

(――まさか!)

 彼は、声にならぬ声で呟いた。