白き砦〈レイオノレー〉

 昔々、歳月でははかりきれぬ上古の昔。

 この世の中心にひとつの泉があった。

 そこに住む女神の御名(みな)はレイオノレー。

 始源に創られたもののうちで、もっとも美しいもののひとつだった。

 女神の手には、紫水晶の石を嵌めた杖が握られていた。それは女神の内に秘められた叡知の象徴であった。

 泉のまわりには四季を通じてとりどりの花が咲き乱れ、精霊たちがいつも集い憩うていた。

 女神は泉の奥の壮麗な神殿に御座(いま)して、すべての命に、美と希望と大地の恵

みとを注いでいた。

 女神を崇拝する者たちの中に、二人の人族の若者がいた。

 ひとりは竪琴を奏でて女神の心を慰め、もうひとりは弓矢もて森に分け入り、美しい鳥を捕らえて献上した。

 彼らはおのれの命よりも深く女神を愛した。そしてやがてはその愛に値うだけの代償を欲するほどに、その情熱は高まった。

 ある夜とうとう竪琴弾きは女神の閨へ押し入って、その想いのたけを竪琴の調べにこめた。

 いつしか女神は深い眠りに誘われ、持っていた杖がその手よりすべり落ちた。

 そこへ狩人が踏み込んで、叡知の杖を真っ二つに折った。

 かくて女神は堕とされて、乙女となって彼らの腕に横たわった。