白き砦〈レイオノレー〉

 男の人は瞳に優美な輝きを湛えて、婉然と微笑み返した。

「ようこそわたしの館へ、エレオノール」

 エレオノールは慌てて身を離した。

「どうしてわたしの名を?」

「そなたがわたしの名を知っているのと同じ理由から」

「わ、わたしはあなたを知りません。お会いしたのも初めてです」

「だがそなたはいま、わたしの名を呼んだ。フリーラインと。フリーライン・ランスロット――それがわたしに与えられた名だ」

 エレオノールはうろたえて、両手で頭を抱えた。

「わたしはまだ夢の続きを見ているの……?」

「夢ではない。わたしをよくごらん。千二百年の時がとうとう満たされたのだよ。〈白き砦〉の目覚める日が近づいたのだ」

「あなたは砦の伝承を知って――知っているのですか?」

 フリーラインと名乗る美しい人は、ゆっくりと頷いて言った。

「わたしはこの日を待っていた。長い長い時をかけて。千二百年は長かった。だが、ようやくめぐり会った」

「あなたはいったいどなたです? どうしてわたしや砦の伝承をご存じなの?」

 するとフリーラインは立ち上がって、傍らのリュートを手に取った。

「わたしは遙かな昔には、竪琴を弾く身だった。そなたを愛し、それゆえに罪に堕ち、永遠に生まれ変わってその罪を償わねばならぬ。そなたが〈折れたる杖〉を見いだし、〈白き砦〉が天に帰する日まで」

「〈折れたる杖〉って何ですか?」

「〈折れたる杖〉とは、失われた女神の封じられた力」

 そう言うとフリーラインは、リュートの弦をかき鳴らし、澄んだ声で語り始めた。