白き砦〈レイオノレー〉

 先ほど賊たちが立ち止まったあの高塀の前に、二人がたどり着いたときに目にした光景
は、予想もしてないものだった。

 そこには、賊たちが乗っていたアルプス産の二頭の馬が、鞍も鐙もなくなった身軽な姿
でのんびり草を食んでいるだけ。

 デュークはこの光景を判じつけようと、裸馬の傍らに立った。

 ただ一つ辛うじて残っていた轡(くつわ)も、金具が外れ、切れた革ひもが垂れ下がってゆらゆら揺れている。

 その切り口を手にとってあらためながら、デュークは首を傾げた。

「妙だな。これは刃物で叩き切られた跡ではない。何か鋭いものに突き通されてちぎれた
跡のようだ」

 彼は凶器にあたりそうなものを探して草むらを見回したが、それらしきは落ちていなかった。

 が、代わりにフロベールが、草むらの外れで尋常でないものを見つけて叫んだ。

「デューク殿、ご覧になってください!」

 フロベールの示した先には、賊のかたわれが仰向けに倒れて転がっていた。

 見たところ気絶しているだけのようだが、押しても叩いても一向に気づく様子がないので、デュークは呼吸の有無を確かめてみた。

「……こと切れている」

 その言葉にフロベールは、さっと眉をひそめた。

「悶絶の跡がないところを見ると、ほとんど即死だったのだろう。落馬したのが致命傷だ
ったのか」

 デュークはひとりごとのように呟きながら、男の体をひっくり返してみた。

 するとうなじの付け根に一筋の血痕が認められた。

 傷口には錐の先であけたような、小さいが深い穴が穿いている。

「延髄を、何か鋭いものでひと突きにされている」

 とデュークが言うと、

「細剣(レイピア)か何かにやられたのでは?」

 とフロベールが答えた。