恋するために生まれた

どれくらい
時間が経っただろう。



まるで
お風呂あがりか
溺れた人みたいに
びしょ濡れになってる。










「ユウ!」




――え?

心臓が
止まるかと思った。




目を開けるとツバサがいた。
ツバサは松葉杖をついてるけど
ギブスはもうない。




「おまえ…
 何やってんだよ」

ツバサは心配そうな顔で
あたしを見つめている。


「雨の日は
 来ないんじゃなかったのか?」

ツバサの目は真っ直ぐだ。

あたしは
すごくドキドキしてる。
口から
心臓飛び出るんじゃないかって
そのくらい、ドキドキしてる。




「初めて…」

「ん?」

「初めて
 ユウって呼んでくれたね」


あたしがそう言って笑うと
ツバサはあたしを抱きしめた。


松葉杖が倒れる音が
屋上に響く。




「ばか…びしょ濡れじゃんか」

「あはは」



――抱きしめられるって
すごく心地いい。

あたしはドキドキしつつも
幸福な気持ちに満たされた。





「おまえのこと
 初めて見た時から好きだった」

「え?」

「おまえが
 好きなんだ」







あたしは
今しんでもいいってくらい
幸せすぎて

ツバサが愛おしくて
涙がこぼれた。